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必要なときに、必要な支援が届く地域インフラを。

本プロジェクトは大阪府堺市をモデル地域として、訪問介護分野の「人手不足の構造課題」を

地域横断型のヘルパーマッチングシステムによって解決することを目指す取り組みです。

本ページでは、社会課題・解決策・実証実験の計画・期待される効果を簡潔にご説明します。 

 1. 社会課題:訪問介護の「人手不足」で何が起きているか

 

介護・福祉の現場では、いまも毎日のように「今日お願いできるヘルパーがいない」という声があがっています。

必要な支援が“あるはずなのに受けられない”状況は、利用者本人だけでなく家族・現場の支援者にも大きな負担となっています。

◆ ヘルパー探しは、いまも電話の「ローラー作戦」

計画相談員は、1件ずつ事業所に電話をかけ、制度対応・空き時間・性別・年齢などを確認しています。
情報が分断されているため、利用者に合うヘルパーを見つけるまでに多くの時間と労力がかかっています。

 

◆ 相性・得意分野・距離が見えず、ミスマッチが発生

事前にヘルパー本人の人柄や得意分野が分からない。

そのため支援開始後に「なんとなく合わない」という違和感が生じます。

結果、利用中止や「もう探したくない」という諦めにつながるケースが多く発生しています。

◆ 働きたいヘルパーはいるのに、仕事が埋まらない

ヘルパーは自分が登録する事業所の利用者しか担当できません。

そうして希望する曜日・時間・エリアと仕事の条件が合わず、 「本当はもっと働きたいのに働けない」人が多数生まれています。

 2. 当事者の声:現場から見える“本当の困りごと”


◆ 計画相談員の声

「ヘルパー探しは、いまも電話の“ローラー作戦”です。
 事業所ごとに制度対応や空き状況を一つひとつ確認しなければならず、
 利用者さんに合う人を見つけるまでに多くの時間がかかります。
 相性や距離の情報が事前に分かれば、もっと早く安心してつなげられるはずだと感じています。 」

 

◆ 利用者の声

「毎日車椅子で生活しているので、本当に毎日の支援が必要不可欠です。

 ヘルパーさんが辞めて人手が足りなくなると、家族の負担も大きくなり、不安になります。

 自分が『この人なら良いな』と思える人にお願いできるような仕組みがあれば、安心して生活を続けられると感じています。」

◆ ヘルパーの声

「一人ひとりに寄り添える仕事に憧れてヘルパーになりました。

 ですが、紹介される支援は希望の時間と合わず、 あっても遠方で、往復1時間の移動には給与が出ません。

 生活が成り立たず、複数の事業所に登録して調整し続ける負担に耐えられず、最終的にヘルパーを諦めました。

 この仕事が嫌いになったわけではありません。 ただ、“つながる仕組み”がなかっただけです。」

現場の声は

「もっと効率よく」

「もっと安心して」

「もっと相性の合う人とつながりたい」

いう3つの共通した願いを示しています

 3. 人手不足の“本当の正体”と構造的な背景


◆「全体的に人が足りない」のではなく、時間帯の偏りが問題

訪問介護の人手不足は、“常にどこでも人が足りない”わけではありません。
実際には、朝・夜・土日など、一部の時間帯にニーズが集中していることが主な要因です。
その時間に動けるヘルパーが少ないため、「支援が回らない」「支援を断らざるを得ない」状況が生じています。

◆ 潜在ヘルパーの存在

一方で、介護福祉士等の資格を持ちながら現場で働いていない「潜在人材」が多数存在していることが報告されています。

初任者研修修了者なども含めると、数十万人規模の人材が「眠ったまま」の状態と推計されています。

◆ 二重のミスマッチ

こうした現状は、次の2つのミスマッチが重なった結果と捉えることができます。

 ① ニーズが集中する特定時間帯での人手不足
 ② 潜在ヘルパーを活かしきれていない構造
この「時間帯 × 潜在人材」のギャップを埋めることが、本プロジェクトの出発点です。

 4. 解決策:ヘルパーマッチングシステムの概要

本プロジェクトで開発する「ヘルパーマッチングシステム」は、

利用者・ヘルパー・計画相談員・事業所・行政をつなぐ地域横断のプラットフォームです。

◆ 主な機能

  • 条件検索:性別・年齢層・時間帯・曜日・資格・対応制度・対応エリアなどで検索

  • プロフィール表示:人柄・得意分野・経験年数・趣味など、相性をイメージしやすい情報

  • メッセージ機能:支援内容や注意点、希望条件のすり合わせ

  • 地図連携:移動距離や所要時間を考慮したマッチング候補の提示

  • 空き情報の共有:事業所をまたいだ「空き状況」の可視化

  • データ蓄積:マッチング件数・条件一致率・継続率などの指標の記録

◆ 解決できること

  • 相談員:電話の“ローラー作戦”からの脱却、調整工数の削減

  • 利用者:相性や得意分野も含めた「自分に合う支援者」との出会い

  • ヘルパー:希望する時間・働き方に合う支援へのアクセス、移動効率の向上

  • 事業所:空き情報の有効活用・稼働率向上

  • 行政:潜在人材活用・離職防止による人材不足対策の一手

本システムは

単なる「マッチングサイト」ではなく、

地域全体で支え合うための

“公共インフラ”

としての機能を目指しています。

 5. 12年間の取り組み:事業所としての実践と学び

代表は大学卒業後、ヘルパー事業所を立ち上げ、12年以上現場で運営を続けてきました。

その中で、ヘルパーの孤立・待遇・負担といった課題に対し、以下のような事業所レベルでできる改善を積み重ねてきました。

  • 複数人体制の導入

    • 一人の利用者に複数のヘルパーが関わる体制を整え、代替要員の確保と孤立防止を実現

  • ICTによる事務効率化

    • コーディネート・記録・請求業務の効率化により、その分を給与や相談体制に還元

  • 相談体制の強化

    • 電話やメッセージでいつでも相談できる仕組みと定期面談の導入により、キャパオーバーを予防

  • 働き方の柔軟化

    • 短時間勤務やWワークなど、多様な働き方に対応できるシフト調整

こうした取り組みの根底には

「支える人を支える」

「人ファースト」

という理念があります。

それでもなお、一事業所の努力だけでは越えられない壁が存在しています。

その壁を越えるための仕組みとして本システムを構想しました。

 6. 既に集まっている協力者・ニーズ

 

堺市内ではすでに、本システムの趣旨に賛同し、実証実験への参加を申し出てくださっている方々がいます。

  • 参加表明しているヘルパー事業所:11事業所

  • 協力を申し出ている計画相談員:26名

  • アプリを使いたいヘルパー:十数名

  • マッチングの利用を希望している利用者:十数名

現場からは

「こういう仕組みをずっと待っていた」

「電話で探すのは限界。必ず参加したい」

といった声が寄せられており、既にプロジェクトは走り始めている状態です。

 7. 実証実験(6か月)の計画:エビデンスの獲得

 

大阪府堺市全域を対象に、約6か月間の実証実験を行い、システムの有効性と社会的インパクトを検証します。

◆ ​利用者に関する指標

  • マッチング条件一致率

  • サービス利用の継続率

  • 満足度(アンケート)

◆ ヘルパーに関する指標​

  • 稼働率の向上

  • 移動時間の削減

  • 希望シフト実現度

◆ ​相談員・事業所に関する指標

  • 電話照会件数の変化

  • 調整業務にかかる時間の削減

◆ ​社会的効果の指標

  • 潜在ヘルパーの復帰数

  • 離職率の改善

  • 地域全体の支援安定性の向上

実証実験で得られたデータについて

行政への提案や制度設計の議論に活用できる「エビデンス」

として整理・公開する予定です。

 8. 法制度の制約と、行政・公的基金との協働が必要な理由


◆ 「利益供与の禁止」という構造的な制約

介護・福祉分野には「利益供与の禁止」に関わる規定があります。

本システムを民間ビジネスとして有料提供し、利用者や事業所から利用料を得る形で運営費を回収することが困難です。

そのため、システムの利用自体は原則「無料」で提供せざるを得ません。​

◆ 選択した解決策:公共財としての位置づけ

この制約の中で現実的かつ持続可能な道として、次の2ステップを想定しています。

 ① 実証実験により、効果をデータで可視化する

 ② 行政と協議し、「公費で継続的に運営される社会資源」として位置づけてもらう

本プロジェクトは、単独の企業収益ではなく

「地域全体のインフラ」

として運営されることを目指しています。

そのため、行政・公的基金との協働が不可欠です。

 9. 期待される社会的インパクト

◆利用者・家族

相性の合う支援が増え

「外出できる」

「住み慣れた家で暮らし続けられる」

といった生活の質の向上が期待されます。

家族介護者の負担軽減にもつながります。

◆ヘルパー

移動距離の削減・稼働率の向上により

以下が見込まれます。

  • 実質的な収入アップ

  • 働きやすさの向上

その結果、離職の抑制や潜在人材の復帰を促す
効果が期待されます。

◆相談員・事業所・行政

相談員の調整業務時間が減り、本来業務に専念できるようになります。

行政にとっては、既存の人材を最大限活かしながら人手不足対策を行うことができ、

費用対効果の高い仕組みとなることが期待されます。

 10. 今後の展望:堺市から全国へ

【第1ステップ】

堺市での6か月実証実験(障害福祉領域を中心)

【第2ステップ】

行政との協働・公費化に向けた提案と制度設計の検討

【第3ステップ】

大阪府内・他自治体への展開、訪問介護のみならず看護・相談支援などへの領域拡大

2040年の人材不足が深刻化する前に、「仕組みの力」で支援の土台をつくる。

そのための一つのモデルケースとして、堺市から着実に検証と改善を進めていきます。

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